臨床研修プログラムの特色

1.最前線での医療

当センターは、高度急性期・重症急性期を担う地域医療支援病院です。最後の砦と言われる大学病院とは異なり、奈良県西部に暮らす県民30万人の命と健康を守る最前線の市中病院ですので、まだ診断がついていない、しかも重篤な患者さんの最初の診療を行うことが使命です。

当センターでは救急対応において、そのファーストタッチを基本的に研修医のみで行います。もちろん、研修医一人に任せっぱなしにすることはなく、上級医・指導医が常に研修医をサポートできる体制を整えています。まずは自分の頭で考え行動した上で、指導医からフィードバックを受けられます。自分の技量に合わせて段階的に指導を受けながら、最前線の医療現場で圧倒的な症例数を経験できるので、めきめき実力が付いていきます。当センターでは、上級医が行う救急対応をただ見ているだけということにはならず、研修医が行うファーストタッチは研修医一人当たり500~600症例(2020~2022年度実績)という圧倒的な経験を積むことができるため、重症例の初療や病棟での急変時にも適切に対応できる技量を身につけることができます。

また、初診外来診療やwalk-inの救急症例の診療も行い、そのすべてで指導医の指導を受けられます。当直では、希望すれば内科系・外科系・小児科当直のすべての患者さんの診療に対応することができ、幅広い経験を積みながら、症候から診断に至るまでの論理的な思考過程をたどる臨床推論能力を身につけられます。

当センターで2年間の研修を修了する頃には、どこへ行ってもやっていけるだけの実力が身に付くことでしょう。

2.充実した教育体制

奈良県西和医療センターでは、病院を挙げて研修医の育成に力をいれています。これは医師だけに限らず、コメディカルや事務職員を含め、病院一丸となって教育に取り組んでいます。多彩な全体学習でのInputと豊富な症例経験によるOutputを繰り返し行い、日進月歩で変化する最前線の医療現場において、適切な医療技術や医学知識を身につけることができます。また、技術や知識のみならず、患者さんに提供する医療への責任感と思いやりの心を育てることを大切にし、医療者としてのプロフェッショナリズムを生涯にわたり研鑽する医師を育てることを目標としています。

研修医は2年間を通してたくさんの講義やハンズオンセミナーを受講します。これらの全体学習はほぼすべて勤務時間内に行われるため、学んだことを自身で振り返る時間や休息を十分にとることができ、充実した臨床研修生活を送れます。
研修医の一週間は、月曜朝の「研修医による研修医のためのモーニングカンファレンス」から始まります。これは救急やプライマリ・ケア診療に重要なTIPSを、上級医の監修のもと、研修医が同僚研修医に向けてプレゼンテーションを行います。テーマについて深く理解するだけでなく、プレゼンテーション能力や司会進行といったファシリテーション能力の鍛錬にもなっており、成人教育法を体験し、Input/Output力の向上にもつながっていきます。

各診療科からは、消化器内科の「消化器疾患スキルアップセミナー」、放射線科の「画像読影トレーニング講座」、循環器内科の「心電図判読トレーニング講座」、形成外科の「外科縫合ハンズオンセミナー」さらには臨床検査技師さんが開催する「超音波ハンズオンセミナー」等、多くの講座やセミナーが定期的に開催されます。一週間の最後には、中村孝人副院長が主催する「総合診療カンファレンス」が開催されます。ここでは豊富な総合診療の経験や多数の論文によるエビデンスを用い、症例を丁寧に省察することで臨床推論能力を高めます。
また、院内の講師だけでなく、院外からも臨床研修で著名な医師を外部講師として定期的に招聘し、研修医向けの教育講座を開いています。例えば年に2回西和医療センターへ洛和会京都医学教育センターの酒見英太先生(元祖NHK総合診療医ドクターG)による総合診療カンファレンスでは、症状や身体所見から診断に至る臨床推論の考え方を磨きます。児童虐待対応プログラム(BEAMS)や病理医とともに行う病理解剖検討会(CPC)等も定期的に開催し、診療能力の向上と明日の医療の発展につなげています。
日常診療基本手技の習得は、診療現場だけで身につけるわけではありません。繊細な手技を確実に習得し患者さんに安心して施行するためには、指導医の手技を繰り返して観察することと、事前のシミュレーション訓練が重要です。当院では臨床研修トレーニング室でシミュレータを使用した気管挿管、中心静脈カテーテルの挿入、腰椎穿刺などの訓練を行い、指導医の手技を繰り返し見学したのちに、指導医の補助のもとで手技を行います。研修医数に対して日常基本手技の経験回数が圧倒的に多い現場ですので、2年間でほとんどの手技を自信持って習得することができます。さらに、毎年7月に行う、神奈川県で行われるクリニカルシミュレーション合宿では、様々な場面での診断・処置・治療の進め方やチーム医療を体験学習し、基本手技のシミュレーション学習に加え、日本救急医学会認定ICLSコースによる心肺蘇生法の習得や、普段は経験困難な外科的気道確保(輪状甲状靱帯切開)など特殊手技の実習も行います。3日間の合宿では技術習得だけでなく参加者同士が大変仲良くなりますので、病院内でお互いの顔の見える、風通しの良い関係性をつくることができます。
こうした全体学習は定期的に研修医へアンケートを行い、研修医のニーズに合わせてより良い教育体制になるよう改訂をおこないます。不評な講座は中止したり、要望があれば今でなかったものを新設したりと、研修医と共に最適なプログラムを創造することで、日々最適な教育を提供できるよう、病院全体として取り組んでいます。

奈良県西和医療センターでは、教育としての講義(座学)や手技を伴うハンズオンセミナーだけでなく、より良い研修環境の整備にも力をいれています。もともと研修医室には一人一つずつ机が用意されていますが、研修医からの要望により、それぞれの机に一人一台ずつ電子カルテPCを支給しました。これにより、病棟へ空いている電子カルテを探しに行ったり、上級医が使い終わったタイミングを見計らったりする必要がなく、いつでも自分の好きな時に自分専用の電子カルテPCを使うことができます。さらに充実した研修体制を提供するため毎年1年目研修医には4月の入職時に最新のiPad miniが支給されます(スクラブのポケットにちょうど入るので便利ですよ!)。他には上級医が使うことのない研修医専用の当直室を2部屋確保しており、女性用シャワールームも完備しています。研修医室は医局とそもそもの建物が独立しているので、文字通り研修医しかおらず、上級医が来ることがないので忖度なくいろんな話ができ、研修医同士で情報交換をしながら和気あいあいと日々楽しく切磋琢磨しています。

事務職員も臨床研修がより良い環境になるよう改善できることを探していますので、困ったことや要望があれば何でも気軽にご相談くださいね!

3.自由自在なローテ選択

奈良県西和医療センターでは、研修医一人ひとりに合わせた最適なローテートを提供しています。厚生労働省が定める必修科目(内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、地域医療)は当然ローテートに組み込む必要がありますが、その他の選択科目と合わせて、いつどのタイミングでどこの科をまわるのかについては研修医自身が自分で自由に決めることができます。

1つ制約があるとすれば、1年目の4月・5月の2ヶ月間は入職したばかりで医師業務について右も左も分からない状況ですので、その最初の2ヶ月間だけは内科をまわっていただきます。この最初の2ヶ月間の内科でカルテの書き方や診察の仕方など、医師業務の基礎を学びます。自分がまわるローテートは4月の入職時のオリエンテーションでプログラム責任者の森本先生と相談しながら決定します。

最初にローテートを決めたものの、色んな診療科を経験していく中で新たに興味を持った診療科がでてくることもあると思います。そんなときは該当するローテート開始の2ヶ月前までに申し出ていただければ一度決めたローテートを後から組み替えて変更することも可能です(直前での急な変更は、変更先の診療科に負担がかかるので2ヶ月前には申し出てくださいね)。

こうした取り組みも、病院全体で研修医一人ひとりにとって最適の研修体制を提供しようという考えの現れなのかも知れませんね。

ローテート(例)

ローテート(例)

※1 循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、腎臓内科から選択

※2 消化器外科、脳神経外科、心臓血管外科、泌尿器科、整形外科から選択

※3 奈良県西和医療センター、奈良県総合医療センター、奈良県総合リハビリテーションセンター、県立医科大学附属病院、国保中央病院、信貴山病院ハートランドしぎさん、上野病院、大阪暁明館病院の各病院で標榜されている全診療科及び郡山保健所(行政)

※ 2年目は進路を見据えて診療科をまわったり、医局の見学等で忙しくなるので、1年目に必修科目をまわる人が多い。

ローテート実例1:内科系志望

ローテート実例1:内科系志望

ローテート実例2:外科系志望者

ローテート実例2:外科系志望者

ローテート実例3:マイナー科志望

ローテート実例3:マイナー科志望

各診療科の特色をパンフレットで見る

各診療科の特色について詳しく知りたい方はパンフレットをご覧ください。

初期臨床研修パンフレット
– 各診療科の特色(P15-26)
病院見学

医学生の見学も随時受付しています。

当センターへの見学については随時受付けています。
ご希望の診療科及びご希望の日程で病院見学を調整します。
ぜひ当センターの研修の様子をその目で見にきてください。
そして当センターの雰囲気を直接肌で感じてください。